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コスプレと著作権法

こんにちは、藤沢"rotter"水族館です。

さて今日は知的財産談義第一弾として「コスプレ」と著作権法の関係を考えてみたいと思います。

コスプレといえば、毎年二回開催されるコミケがその代表でしょう。数多くのコスプレイヤーが参加し、クオリティの高いものがTwitterで拡散されたり、中にはテレビ界へと進出する方々も出てくるまで大衆に受け入れられるようになった文化であります。コミケに限らず、例えば来週3/19に大阪・日本橋で行われるストリートフェスタにも多くのコスプレイヤーの参加が予想されます。

そんなコスプレですが、モデルとなるキャラクターのコスチューム製作やそれを身につけることについて、そのモデルとなる著作物の著作者は著作権を行使することができるのでしょうか。

 

まず、著作権に規定されている権利内容について少し触れておきましょう。著作権には著作権者(厳密にはノットイコールなのですが著作者だと思ってもらえればいいです)に著作物をコピーさせたり(複製権)、著作物を公衆に提供したり(譲渡権)、レンタルしたり(貸与権)と、この他にも様々な権利が設けられています。そうした権利の一つに「翻案権」というものがあります。ちょっと条文をみてみましょう。

 

著作権法27条

著作者は、その著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案する権利を有する。

 

法律を見慣れていない人からすると「こいつは何を言っているんだ」となるかもしれませんね…、噛み砕いて言うと「著作物を翻訳(言語)、編曲(音楽)、変形、脚色(手を加えたり誇張したり)、映画化するとか、この他翻案(大筋を真似て細かいところを作り変える)できるのは著作権者だけだよ!」ってことです。わかりやすいですね。この条文は実際に列挙されているような編曲や映画化の時はもちろんなのですが、他にも例えば同人誌を作るときなんかにも気をつけなければならないものです(変形や脚色に当たる)。コスプレはこの「変形」や「脚色」に当たる可能性があります。また、少し話がそれるかもしれませんが、同人誌のような「二次的著作物」と言われるものは著作権法28条で「原著作物の著作者は(略)当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する」と規定されています。つまり二次的著作物の著作者が有する権利は、そのモデルとなった著作物の著作者にも帰属するわけです。先ほど「話がそれるかも」と言いましたが、この条文もコスプレを二次的著作物と解釈できれば見逃せないものとなるでしょう。

それからもう一つ、重要な規定があります。著作権法には上に示した財産的権利の他に、著作者人格権という権利が設けられています。著作権は知的財産権なので権利の譲渡や移転(つまり著作者≠著作権者となること)が可能です。しかし、著作者にのみ与えられ、譲渡や移転が不可能な権利として著作者人格権というものが存在するのです。その一つに「同一性保持権」があります。条文をみてみましょう。

 

著作権法20条

著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有しその意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。(後略)

 

「?」と思われたかもしれませんね、これも簡単にいうと「著作者は意に反して自分の著作物の内容を題号(タイトル)含め他人に変えられない」ってことです。つまり平面で描かれたキャラクターのコスチュームを立体的なものにすると、著作物の内容を改変したことになるかもしれず、同一性保持権の侵害になる可能性があります。

 

ここまでの話をまとめると

コスプレが侵害するかもしれない権利

・翻案権

・同一性保持権

(・複製権(上では触れていませんが…))

となりますね。ではコスプレイヤーに自由はないのか、今度はそういった面から著作権を考察していきましょう。

 

著作権には制限規定というものが設けられています。これは著作者による権利の濫用を防ぐために規定されたものとみていいでしょう。例えば試験や教育のために著作物を利用しても、著作権法違反にはならないといったものです。そうした制限規定の中に次のようなものがあります。

 

著作権法38条第1項

公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。

 

無料であれば、著作権上保護される演劇や舞踏の上演、音楽の演奏、映画の上映などが自由にできるというわけです。「あっ、ならコスプレも大丈夫っすね」と思われたそこのあなた、ちょっと待ってください。ここで問題となるのは「コスプレをする行為がこの法律に適用されるのか」ということです。後述する著作物規定では、列挙事由以外にも著作物性が認められますが、不正競争防止法の不正競争規定は列挙事由以外、不正競争性は認められません。権利を認める際には寛容に、取り締まる際には厳格に、ということなのでは?と考えれば、適用されると考えられますが、こればかりは専門家の方に判断をお任せするほかありません。頑張ってえらいひと。

 

さてここまで、コスプレと著作権法の関わりについて述べてきました。最後にもう一つだけ、大きな話をしたいと思います。それは「そもそもキャラクターって著作物なの?」ってことです。「は?」って思われた方もいるでしょうが、これに関しては私も最初「は?」って思いました。そもそも著作権法は「著作物」を保護するもので、著作物じゃなかったら保護する必要はないわけです。では「著作物」とは何なのか、条文を見てみましょう。

 

著作権法第2条第1項第1号

著作物  思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

 

これが著作権法で保護される著作物の定義です。しかし先ほど少し述べた通り、ここに列挙されていないものでも保護される可能性があります。では「キャラクター」はどうなのでしょうか。

判例を見ていくと、これに関連した事件があります。ポパイネクタイ事件として知られる平成9年7月17日最高裁判決の判決要旨に

漫画において一定の名称、容貌、役割等の特徴を有するものとして反復して描かれている登場人物のいわゆるキャラクターは、著作物に当たらない。

とあります。つまり「漫画のキャラクターは著作物ではない」ということです。

ということはコスプレは著作権侵害にならない…?という可能性もそれなりに存在するということです。

だったら無条件にコスプレをして大丈夫かというとそういうわけでもなくて、ディズニーやポケモン等は商標登録がされており、商標法という別の法律で保護されているためそちらへの留意も必要になります。

 

ここまで長々と著作権とコスプレの関係について述べてきましたが、結論「ここまで大した問題になっていない」ことや、「権利者側も寛容な方が多い」という点から考えて、そこまで超深刻に考えなくてもいいのかな、と思います。ただ先日、任天堂が株式会社マリカーを訴えた際、コスチュームにおける著作権侵害も訴訟内容の一つとしていた以上、営利目的でコスプレを行う(例えばコスプレ写真集を販売するとか)場合は、権利者側に許諾をもらうなどする必要があるのではないかと思います。

 

それでは今回はこの辺で失礼します。読んでいただきありがとうございました。